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アンプ漫遊記 第四弾! Mesa/Boogie アメリカン・ドライブサウンドの礎

アンプ漫遊記
第一弾 Marshall JCM800
第二弾 Marshall JCM900
第三弾 Fenderアンプの選び方
第四弾 MESA BOOGIEアンプ
第五弾 ギターアンプのスピーカー
第六弾 理想のサウンドはこうして見つける!
Mesa/Boogie アメリカン・ドライブサウンドの礎

 Marshall、Fenderに続くギターアンプと言えば?おそらく多くの人がその名をあげるのがMesa/Boogieでしょう。アメリカンアンプのもう一つの代表格として時代の音を作って来た老舗と言える存在であり、サンタナからメタリカまでジャンルを超えて愛された第一級のトーンを持つMKシリーズや、その後のモダンヘヴィ系サウンドを形容する存在とまでなったRectifierシリーズなど、独創性の高い上質なサウンドと、妥協のない設計/製造コンセプトを貫くアメリカ屈指のブランドということが出来るでしょう。サイマルクラスと言われる独自の出力構造を持つパワーアンプのデザインなど、演奏性と音のクオリティのための妥協のないこだわりが唯一無二なモデルを数々と生み出していきました。またMarshallに先駆けてクリーン/ドライブ切り替えが可能な2チャンネル仕様のモデルを製造し、これは世界初のことと言われています。今回はそんなMesa/Boogieが世に知られる経緯を追いながら、特に初期のMKシリーズにスポットを当てて、そのデザインの独自性について検討してみようと思います。

はじまりは Fender Princeton から

 Mesa/Boogie社の創始者でもあり、Mesa/Boogieアンプの設計者でもあるランドール・スミスがアンプの修理/改造を始めたのは1960年代の後半のこと。1940年代にサンフランシスコに生まれ、クラリネット奏者を父に持つ彼は、幼少時より楽器〜特に木管楽器〜の音に親しんでいました。また少年時代から彼は、当時最先端だった真空管のオーディオ回路に興味を持ち、近所のエンジニアが経営していたガレージショップに入りびったってはラジオなどを制作して楽しんでいたそうです。このようにランドール・スミスは良質な楽器の音と、優れたエンジニアリングに恵まれながら育って行きました。

はじまりは Fender Princeton から

 そして1960年代、世はロックンロールミュージックの全盛期、既にフェンダーはブラックフェイスアンプの時代でアメリカンミュージックでは中心的な存在となっており、また海の向こうのイギリスではマーシャルアンプが産声を上げていました。しかしながら当時の音楽シーンではエレクトリックギターの役割はまだリズムパートで、歌の合間のソロパートの多くはサックスなど管楽器によって占められていました。当時の多くのギタープレイヤーがリードプレイの中心となることを望みながらも、それに必要充分なゲインとサスティン不足に悩んでいたのもこの時代です。当時主流であったフェンダーアンプはコードワークにおいては威力を発揮していましたが、管楽器のような伸びやかで歌うようなトーンを得ることはなかなか難しく、またマーシャルもまだアメリカにはあまり浸透していない時代でした。このためフェンダーアンプへのマスターヴォリューム改造などもなされましたが、なかなか良質なリードトーンを得ることができない状況が続いていました。

 こんなシーンの中、高校生だったランドール・スミスも当然ながらロックンロールに夢中になっていきます。かれはドラマーとしてプレイしていましたが(奇しくもジム・マーシャルと同じ)、既にこの頃にはかなりのエンジニアリングの腕前もあったようで、バンドメンバーたちのアンプの修理も請け負っていたようです。やがて彼の修理の腕前は広く知られるようになり、彼は友人とサンフランシスコのベイエリアにリペアショップを設立します。彼の店は地元で大いに話題になり、ジェファーソンエアプレインやドゥービーブラザーズなど多くのミュージシャンも顔を出すようになりました。

 そんな日々の中、彼は特にフェンダーアンプの修理/改造を行っていましたが、1969年のある日ふとした悪戯心で「小型の練習用アンプからとてつもなく大きな音が出たら面白い」と、フェンダーのプリンストンアンプに大型のトランスを搭載し、6L6パワーチューブを2本内蔵させたベースマンの回路を組み込みました。バッフルボードを交換してスピーカーにはJBLの12インチを使用(はずした元のバッフルボードはDog Yardと呼ばれていた当時の工房のドアに使用したそうです)。これをたまたま通りがかったあるお客が弾いて一言「Shit man, That little things really Boogies !!」これがブギーの名の由来になりました。そのお客とは当時飛ぶ鳥落とす勢いでブレイクしていたカルロス・サンタナでした。

 サンタナのおかげでこのブギー/プリンストンは大変な注目を集め、相当な数のオーダーがランドールの元へ殺到したそうです。彼はこのため150〜200台ほどのこのブギー/プリンストンを制作しましたが、フェンダーのオールドアンプを元にしているだけに供給がままならず、日々増大するリクエストに応えることが難しくなりました。このためランドールはMesa Engineeringという会社を設立し、オリジナルのアンプを開発/製造することをスタートさせます。(もっともメサ社は、とにかく器用だったランドールが副業で行っていた車の修理の仕事の名義上必要だったもので、名前も思いつきだとか…。)ともあれオリジナルアンプの第一号はMesa/Boogieとして(ソニー/ウォークマンみたいなニュアンスでしょうか)約3,000台ほどが製造されました。これが後の時代で言うところのMK-Iです。

>> そんなおかげで話題となったフェンダープリンストンはこちら。

初のリードギターアンプ?

 このようにしてMK-Iが登場したのが1972年のこと。プリンストン/ブギーモデルにさらに1本のプリチューブを追加し、これによりさらにゲインをサスティンを得ることが可能になりました。Volume1とVolume2、そしてマスターと3つのヴォリューム構成により、幅広いゲインコントロールを実現しました。ゲインアップのためのヴォリュームが搭載されたモデルとしては世界初とも言われています。マーシャルでさえマスター付きが登場するのが75年からですから、これが如何に早い時期のことであったか想像に難くないと思います。そして12インチのスピーカーが内蔵されたエンクロージャーにはコアやメイプルなど豪華な木材が使用たハードウッド仕様のものも作られ、それまでのギターアンプになかった高級楽器の風格が漂うことになります。歌うようなシンギングトーンと豊かな木の鳴りが、ランドールに幼い頃より馴染んだクラリネットの音を想起させていたのでしょうか。時代的にはカルロス・サンタナの全盛期であったことは言わずもがな、ハードロックの台頭やクロスオーバーのムーヴメントなども相まってリードギターがますます音楽の中心的位置を占めるシーンへと移り変わって行きます。日本でも高中正義氏など多くのリードギタープレーヤーがこのモデルの伸びやかなトーンに魅了され、世界的な評価を確立して行ったのでした。

1チャンネルに2つのヴォリュームとマスターを装備。ゲインブースト段でのヴォリュームは世界初。
 
1チャンネルに2つのヴォリュームとマスターを装備。ゲインブースト段でのヴォリュームは世界初。

追記:MK-Iのリイシューモデルは2008年8月末を以て生産完了となりました。

 そして1979年、リード/リズム切り替え機能を持ったMK-IIが登場します。(逆に言えば、このMK-IIの登場で、それ以前のMesa/BoogieモデルがMK-Iと呼ばれるようになる。)この時期のチャンネル切り替えは画期的で、まだマーシャルでもフェンダーでも実現していない頃のことでした。世界的な視野で見れば日本のYAMAHA Fシリーズとどちらが早いか微妙なところですが、チューブアンプではおそらく世界初と言って良いでしょう。そして翌80年には世界初のエフェクトループ、そしてサイマルクラスを搭載したMK-IIBが登場。これはパワーチューブのクラスA動作とクラスAB動作をミックスさせ、両者の長所を共に引き出すことに成功した独自の作動方式で、これにより高出力ながら、繊細でレスポンス豊かな「鈴鳴りトーン」を得ることが可能です。この機能はMesa/Boogieだけのパテントとなり、MKシリーズには現在まで使用されています。そして83年にはエフェクトループをスイッチング可能にしたMK-IICが登場。このように、マーシャルやフェンダーなどに比べて後の時代のイメージの強いMesa/Boogieですが、確かにスタートはやや後だったものの他ブランドに先駆けて後の時代の基盤となる機能を次々と開発しており、極めて先鋭的なメーカーであったことが伺い知れます。このMK-IIモデルも、時代を先読みしたかのようなハイゲインなトーンで、フュージョン系のプレイヤーに重宝されたのはもちろん、メタリカなどのヘヴィミュージックシーンからも愛用され、後にハイゲイン=Boogieという図式を作る基礎となったと言えます。事実、80年代中盤から起こるヘヴィメタルのシーンでは改造マーシャルか鉄アミのキャビネットをを積み上げたMK-IIIのスタックかがトレードマークとなっていました。

リード/リズムの切り替えが着いたMK-IIのコントロール部
 
フットスイッチでも切り替え可能です。
 
80年代のモデルはショックマウント方式を採用。アンプシャーシを直接キャビネットに固定しないため対衝撃性が向上しました。
 
ちょっと一休み〜クラスAとかクラスABって良く聞くけど何?

 アンプのスペック表記などで良く目にするこの言葉、何を表しているのでしょう。これはパワーチューブの動作状態を表しています。パワーチューブはプリアンプからの信号をスピーカーで鳴らすレベルまで増幅する役割を持った真空管ですが、安定して動作させるためには様々なファクターがあり、その作動状況は色々です。
わかりやすく図で説明すると、音声信号とは波形になりますので下記のような形になります。

Class A クラスAはこの信号を(入力の有無に関わらず)全ての真空管が随時駆動状態で増幅している動作のことを言います。各真空管は常にフル駆動で、入力信号が入る前から全開で動作しているため、入力信号に対するレスポンスも良く、タッチのニュアンスなどが鋭敏に反映された表現力の豊かなトーンになります。反面、真空管が常にフル駆動しているため発熱量も大きく、クリップも早いため大きな出力には向きません。また同様の理由で真空管の寿命が短いという欠点もあります。

これを解消するために発案されたのがクラスBという作動方式で、まず上記の図の波形を中央から二つに分けます。

Class AB するとこのような形になりますので、複数の真空管で上側を片方の真空管が、そして下側をもう片方の真空管が増幅する形を取れば、各真空管の仕事量は半分で済み、この動作のことをプッシュプルと言います。加えて、信号が入力される前からフル駆動状態だったクラスAに対して、クラスBでは、信号が入力されることによりバイアス電流が流れ、無信号では真空管が休んでいる機能が追加され、真空管の寿命が遙かに増大しました。

 しかしながらこのクラスBでは、信号が入力されてから真空管が立ち上がることによるレスポンスの悪さや、大音量ではともかく小さな信号に対する再現性の低さ、ノイズなどの欠点が上げられ、音響的には適していませんでした。このためこのプッシュプル動作に随時僅かなバイアス電流を与え、レスポンスを向上させたのがクラスABです。クラスBにクラスA的役割を少しだけ与えたのがこのクラスABと言え、マーシャルや近年のフェンダーなどほとんどがこの方式を利用しています。

 そしてMesa/BoogieのMKシリーズで登場するサイマルクラスとは、4本搭載したパワーチューブの内の2本をクラスABの60Wで出力し、別の2本をクラスAで15W出力とミックスすることで、クラスA時のレスポンス豊かなトーンとクラスABのハイパワーな出力の両者の魅力的な要素を上手くブレンドすることに成功した方式です。クラスA動作させるパワーチューブは通常使用している6L6以外にEL34も差し替え可能で、ややヨーロピアンがかったサウンドも選択できます。
 当然のデメリットとして、最大出力や真空管寿命に関しては前述させて頂いた通り、クラスAB時ほどではありません。このためクラスAB出力の60/100Wモデルも同時に製造されています。

※クラスAに関して

 クラスAについてオーディオの世界などで、どこまでが純粋A級動作であるかという議論もあり、厳密なクラスA動作のアンプはほとんど存在しないとの考えもありますが、ここでいうクラスAとは通常ギターアンプの世界でそう呼ばれているものを示し、「限りなくクラスAに近いクラスAB」「クラスA的なクラスAB」である場合も含みます。

>> そんなクラスAモデルとして知られるアンプたちはこちら

MK-III 〜 MK-IV

 MKシリーズの歴史に戻ります。1986年、MKシリーズの中でも最もメジャーな存在となったMK-IIIが登場します。このモデルは従来のリード/リズムの2チャンネルに加え、リズムチャンネルをクリップさせた「リズム2」のチャンネルを内蔵させた3チャンネル仕様。2チャンネル切り替えですら新しかったこの時代においては先鋭的過ぎるモデルでした。標準的には6L6x2の60Wがスタンダードで、4本のパワーチューブを使用したサイマルクラス及び60/100Wのオプションが選択可能で、フットスイッチング可能なEQとリヴァーブもオプション装備されていました。トラディショナルなハードウッドの外装も選択出来る一方で、黒い鉄のグリルが精悍でハードなイメージを持つEXキャビネットも用意され、マーシャルと並んで80年代のハードシーンの顔的な存在となって行きました。

MK-III 〜 MK-IV
 
全てのノブがプッシュ/プルに。リズム2(クランチ)を加えた3チャンネルを実現。
 
イコライザを装備
 

 そして89年、独立3チャンネル仕様のMK-IVが登場。クリーン/クランチ/リードの独立した3チャンネル及びEQ、エフェクトループなどを切り替え可能にした6連のフットスイッチを装備し、エクスターナルのコントロールにより他のスイッチャーからでも操作できます。またおなじみのクラスA/サイマルの切り替えに加え、トライオード/ペントードのセレクトも可能で、パワーアンプをミュート可能なレコーディングアウトまで搭載と至れり尽くせりのモデル。今でこそ主流な機能ではありますが、20年近く前にこれらを装備していたことを考えるとその先見性には驚かされます。このMK-IVは今も生産されており、新品でも入手できます。

追記:MK-IVは2008年8月末を以て生産完了となりました。

 
独立した3つのチャンネルを持つMK-IV
 
クラスA/サイマルの切り替えに加え、トライオード(3極)/ペントード(5極)の切り替えも可能に。
 
各チャンネル及びEQ/エフェクトループがON/OFFできる専用6連スイッチ。

 こうしてフェンダー改造のプリンストン/ブギーからMK-IVまで今に至る流れを駆け足で見て来ましたが、皆さんが一番スタジオなどで良く見かけたモデルはやはりMK-IIIではないでしょうか。MK-IIIなら弾いたことがある、という方も多いかと思います。そんな方とお話していて時折耳にするのが、「MK-IIIは歪みは良いけど、クリーンが…」という声。実際、筆者もある時期まではそう思っていたこともありました。しかしある時新品のMK-IIIを弾く機会に恵まれ、新品のアメリカンチューブが使用されていたものでしたが、その時の衝撃は鮮烈で、「個人的にこれまでに耳にした3大クリーン」に入るほどのものでした。(後の2つはCallahamのEL84VとFenderのツイードツイン)。倍音があらゆる方向から美しく立体的に聴こえ、「鈴鳴り」サウンドはこのことであったかと、その時の余韻は未だに焼き付いています。

 今回ご説明させて頂いたような理由で、Mesa/Boogie MKシリーズは特に真空管のトーンをよりストレートに表現するように作られており、このため良質な真空管を使用した時のサウンドは格別です。しかしながら同様の理由で、真空管の消耗も他のモデルに比べて早いため、全てが万全のコンディションにあるわけではありません。真空管の音に対してより素直であるがため、消耗した管ではその音をそのまま出してしまう正直さが有り、このあたりがMKシリーズの評価を微妙なものにしているのだとすると少々もったいない気もします。(乱暴な話、マーシャルなどはそれなりのチューブでも「マーシャルの音」を出してしまう強引さがあり、そのあたりがマーシャルの凄みでもあると思いますが…。)

 もしMKシリーズをご所有されている方で、クリーントーンに疑問を感じていらっしゃる方がいらっしゃいましたら、是非パワーチューブを交換してみることをお勧めします。  またスタジオなどでお見かけになった際は、60Wか、60/100Wか、あるいはサイマルか(裏にSimul Classと書いております)それぞれに音はかなり違いますので、背面を見てみても楽しいかと思います。

背面

 またこのアンプ漫遊記に関して、ご希望や取り上げてほしい企画などご意見をお待ちしております。まだまだ勉強中の身ではありますが、出来る範囲で(そしてそれを広げて)お応えいていきたく思います。お便りはtomita@tcgakki.comまで。

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Mesa/Boogie




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