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アンプ漫遊記 第五弾! スピーカー

アンプ漫遊記
第一弾 Marshall JCM800
第二弾 Marshall JCM900
第三弾 Fenderアンプの選び方
第四弾 MESA BOOGIEアンプ
第五弾 ギターアンプのスピーカー
第六弾 理想のサウンドはこうして見つける!
アンプ漫遊記 第五弾! スピーカー Speakers for guitar amplifiers

サウンドの出口、スピーカーが音を決める!ギターアンプ的に見たスピーカーの歴史と選び方

はじめに

 どんなアンプも、結局実際に音を出すのはスピーカーで、我々の耳に一番近い音の出口であると言えます。「マーシャルの音もフェンダーの音もスピーカーがなくては成り立たない」とまでは言い過ぎかも知れませんが、ギターサウンドにおいてスピーカーが確実に重要な役割を締めていることは間違いないでしょう。そこで今回はギターアンプにおけるスピーカーというものにスポットを当てて行きたいと思います。

 エレキギターに比べて、スピーカーの歴史はかなり古く、世界で初めてラウドスピーカーが公に使用されたのは1919年、サンディエゴで行われたアメリカのウィルソン大統領の演説からだと伝えられています。その後、音声映画「トーキー」の爆発的なヒットに伴って、映画館を中心に様々な民声用スピーカーが開発されました。やがて1950年代にエレキギターが登場し、60年代ロックミュージックのムーブメントが起こると、それに伴い楽器用スピーカーも次々と登場しました。


スピーカーは楽器の一部?

 ギターアンプのカタログなどで良く目にされることも多いかと思いますが、「セレッションスピーカー搭載」などのキャッチフレーズ。フェンダーはジェンセンがいいだとかマーシャルはセレッションに限るとか、いろいろな声もあり多くの神話や噂話が溢れるほどに、多くの人々がギターアンプのスピーカーに対してこだわりを持っていることが覗えます。

 例えばギターを弾きながら歌う人が、PAのスピーカーのユニットを気にするでしょうか。「俺はJBLでしか歌わないんだ!」というヴォーカリストがいるでしょうか。しかしそれがギターアンプの話になると俄然、「グリーンバックじゃなきゃ」「ジェンセンこそ」とこだわりが出てくるから不思議です。これはギターアンプでは使用されているスピーカーがアンプそのものと同じくらい重要なファクターを持っており、「単に音を出す場所」ではなく「音を作り出す楽器の一部」であるためです。ここまでスピーカーが、ある種、神話的にまで重要視される場所は、奥深いオーディオの世界と、ギターアンプだけなのかも知れません。

 ギターにディストーションなどのエフェクターを繋いで、家のステレオなどに繋げて音を出したことのある方も多いかと思います。結果はジャリジャリとした、とてもギターサウンドとは思えない音になってしまったのではないでしょうか。マーシャルなどのヘッドのラインアウトからミキサーに繋いでも同様。かつてはスピーカーシミュレーターなどの商品も多数存在し、ライン時でもスピーカーに似たサウンドを得るためには音を加工する必要がありましたし、近年のデジタルモデリングでもスピーカーからの出音を含めた音をサンプリングして音作りがなされています。このようにギターアンプ特有のふくよかで厚みと立体感のあるサウンドはスピーカーが作り出していると言っても過言ではないのです。

 現在、ギターアンプを製造しているメーカーで、スピーカーまで自社で製造しているメーカーはほとんどなく、多くのメーカーが有名スピーカーメーカーのスピーカーを使用しています。このためアンプとスピーカーの相性というかマッチングの妙味などが、よりそのサウンドの独自性を強めています。それでは実際に「フェンダーとジェンセン、マーシャルとセレッション」と言った具体例を見ながら、スピーカー探しの旅へ。少し歴史の中を漫遊してみましょう。

目次
すべてはJensenから始まった!?
アメリカンサウンドの父「Peter Jensen」
もう一人のヒーローの悲劇の生涯「JBL」
英国が誇る天空のスピーカー「Celestion」
スピーカーの判別法
スピーカー交換にチャレンジ/許容入力とインピーダンス



すべてはJensenから始まった!?
アメリカンサウンドの父「Peter Jensen」

 特にツイード期のフェンダーアンプでおなじみのJensenスピーカー。これこそがアメリカンサウンドのみならず、世界のスピーカーの始まりと言って良いでしょう。

 Jensenの創始者であるPeter Jensenは意外にもデンマークの出身。1886年に生まれた彼は若い頃から電話機やラジオの技師として働きます。やがて23歳でアメリカに渡った彼は、Edward Pridhamという技術者と出会い、互いの才能に惹かれ合った二人はカリフォルニアに小さな工房を設立しラジオの送信機などの開発を始めます。そして1915年、JensenとPridhamは、世界で初めてボイスコイルを使用したラウドスピーカーを発明。これがその後の全ての音響設備の始まりと言って良いほどの大事件でした。発明されたスピーカーは「Magnavox」と名付けられ、それに伴って二人はサンフランシスコにMagnavox社を設立します。Magnavoxのスピーカーは民声用あるいは軍事用として全米に広く知れ渡って行きました。そして1925年にMagnavox社を離れたJensenはシカゴに移り翌々年の1927年にJensen社を設立。これが伝説となるジェンセンスピーカーの誕生の瞬間でした。

Magnavoxの真空管のパッケージ。
ラジオ/テレビ用と表記されており当時の世相が偲べます。

Magnavoxの真空管のパッケージ

 シカゴに移ったJensenはラウドスピーカーの開発に乗り出して行きます。こうしてラウドスピーカーのパイオニアとしてアメリカにその名を広めていきます。1940年代、ギターアンプの開発に乗り出していたレオ・フェンダーがJensenのスピーカーと出会うのもむしろ当然といえば当然だったのかも知れません。こうしてJensenのスピーカーは50年代フェンダーツイードサウンドにとってなくてはならない存在となって行ったのです。

Jensenスピーカーが使用された50年代前半のフェンダーアンプ

Jensenスピーカーが使用された50年代前半のフェンダーアンプ

 そして60年代に入りロックミュージックが普及し始めると、ギターアンプの供給も増え、AmpegやGibsonなどのメーカーもギターアンプの制作に乗り出します。使用されたのは当然Jensenのスピーカーでした。

60年代Ampegのブルーダイアモンドの背面からもJensenのロゴが覗ける。

60年代Ampegのブルーダイアモンドの背面からもJensenのロゴが覗ける。



Jensenの終焉

 このようにして一時代を築いたJensenのスピーカー。シーンが拡大するにつれて、当然のことながら多くのメーカーがラウドスピーカー市場に参入し、そしてJensenのサウンドを参考にした数多くのモデルが作られました。OxfordやUtah、そしてかつてMagnavoxのエンジニアであったBob Gaultが加入したCTS(Chicago Telephone Supply)など、多くのメーカーがJensenを手本にスピーカーを製造して行きました。

 そして60年代初頭よりフェンダーアンプもOxfordのスピーカーを採用し始めます。これにはいくつかの説があり、レオ・フェンダーがJensenに対し何らかのリクエストをしたもののJensen側が応じなかったとの噂も残されています。そのリクエストというものがサウンド的なものだったのか、コスト的な面だったのか今となっては謎ですが、1963年よりFenderのアンプにリヴァーブが搭載されたことを考えると、その開発とのマッチングという要素もあったのでしょうか。結果、60年代のブラックフェイスリヴァーブサウンドの中核はOxfordが担うことになりました。
Oxfordスピーカーが搭載された64年製Fender Princeton Reverb

Oxfordスピーカーが搭載された64年製Fender Princeton Reverb

 Peter Jensenがこの世を去ったのは1961年と言われています。音に捧げた生涯でした。Peter Jensenを失ったJensen社は求心力を失ったのか、次第にスピーカー市場から手を引き、60年代後半にはスピーカーの製造を中止しました。こうしてJensenスピーカーは永遠の伝説となったのです。
(しかし、その後もJensenのサウンドを求めてやまない声に後押しされ、現在ではイタリアのSICA Altoparlanti社がライセンスを取得し、当時と同じ製法で作られたモデルがJensenの名でで製造されています。)
Oxfordスピーカーが搭載された64年製Fender Princeton Reverb

Fenderのロゴが入った66年製のJensen。60年代後半頃までこのデザインは見かけられる。

90年代以降の復刻型Jensenは MADE IN ITALY と表示されている。

90年代以降の復刻型Jensenは"MADE IN ITALY"と表示されている。


Jensen後のアメリカンスタンダードEMINENCE

Jensen後のアメリカンスタンダードEMINENCE

 Jensenが市場から消えてゆくのと前後して、後を引き継ぐかの如く登場したのがEMINENCEでした。前述もしましたが、かつてPeter Jensenが設立したMagnavoxのエンジニアであり、CTSでもスピーカーのデザインに携わっていたBob Gaultが1966年にEMINENCE社を設立しスピーカー製造を開始します。設立当初はAmpegの依頼を受け、1日3個ほどのスピーカーを製造していたそうですが、Jensenからの血統を受け継ぐスピリットと豊かな技術力に支えに、Peaveyを始め多くのアメリカンブランドからその確かなトーンを求められ、今日では1日で10,000個のスピーカーを製造するアメリカで最も巨大なスピーカーメーカーとなっています。
 フェンダーアンプにおいても70年代に入ってクオリティの低下したOxfordに取って代わり、現在ではほとんどのモデルに使用されています。また古くからの付き合いのAmpeg、Peaveyや、新たにSoldano、VHT、Rocktron、Egnatorなどの有力ブランド、そしてHartke、Gallien Kruegerを始めとするベースアンプまでほとんどのメーカーでその姿を見ることができます。


もう一人のヒーローの悲劇の生涯「JBL」

 Jensenから今に至るアメリカンスピーカーの系譜を見て来ました。こうしてみるとブランドは違えど、Peter L.Jensenの伝説的サウンドを多くのメーカーが追い続けてきたのがアメリカンスピーカーの歴史となっているとも思えます。
 
 しかし、アメリカンスピーカーの歴史において忘れてはならない天才がもう一人存在します。同じく音に捧げた生涯。破滅するまで音を追い求めた悲劇の天才、James B. Lansingです。
もう一人のヒーローの悲劇の生涯「JBL」

 ご存じJBLの創始者、James B. Lansingが生まれたのは1902年。Peter Jensenより16歳年下ということになります。例にもれずJames B. Lansingもまた幼少期から電気機械に興味を持ち、分解したり作ったりに熱中する少年時代を過ごしました。近所で天才少年として名が立つほどの熱中ぶりだったようです。
 
 やがて成人した彼はラジオ局のエンジニアの道を選びました。しかし当時満足に音楽を再生できるスピーカーがなかったこともあり、彼はスピーカーの制作に熱を上げて行きます。そして1927年、カリフォルニアに自らLansing Manufacturing Co.を設立しスピーカーの製造を開始。奇しくもPeter JensenがMagnavoxを放れJensen社を設立したのと同じ年でした。時代は折しもトーキー映画の大ブーム。Lansingのスピーカーはそのサウンドの良さでアカデミー賞の技術部門を受賞するなど大好評を博し、多くの映画館から求められていきます。しかしながら飽くなきサウンドへの追求が逆に災いしたのか経営的にはふるわず、次第に苦境へと陥って行きました。

 ちょうどその頃、アメリカの音響メーカーとして大手だったWestern Electric社が、主に映画館など音響設備のメンテナンス業務としてAll Technical Services(アルテックサービス)を設立していました。All Technical Servicesは窮地にあったLansingの高い技術力に目を付け、Lansing Manufacturing Co.を1941年に買収し、Altec Lansingという会社を設立します。そしてJames B. Lansingはその副社長としてスピーカーの開発にあたることになりました。これまた銘器として名高いAltecスピーカーの誕生です。James B. Lansingの才能はAltec Lansingにおいて遺憾なく発揮され、幾多の銘スピーカーがこの時生産されました。Altecが後に伝説的スピーカーメーカーとして称される背景には、この時にLansingのもたらした技術が核になっていると言われています。

 そして1946年、James B. Lansingはさらに自らの志すサウンドを奏でるスピーカーを作るためAltecを離れ、James B. Lansing(JBL)社を設立します。これまた奇しくもフェンダーアンプが世界に登場した年、JBLも生まれました。そして翌47年には永遠の銘器と言われるD130を製作。後にD130Fとしてフェンダーアンプでも絶大な評価を誇る最高傑作。しかし残念なことにこれがJames B. Lansingの遺作となりました。

 自らの音を求めAltecから独立しJBL社を設立したものの、経営的には依然として厳しい状況でした。天は二物を与えずというか、よほどツキから見放されていたのか。あるいはあまりに「音」を愛するが故に他の神様から嫉妬されたのかも知れません。次第に多額の負債を抱え、行き詰まってしまったJames B. Lansingは1949年、ついに自ら命を絶つことを選ぶのです。享年47歳。

 しかしそれでもJBLは死にませんでした。音に対して飽くなき追求をし続けたJames B. Lansingのそんな生き様が、彼を慕う多くのエンジニアたちに受け継がれ、会社は再び軌道に乗りJBLの名は輝きを取り戻して行きます。時代を彩った幾多の音響スピーカーが作られる一方、60年代には銘器D130の楽器用ヴァージョンであるD130Fがフェンダーアンプのオプションとして使用され、その美しい倍音と豊かな鳴りで多くのプレーヤーを魅了しました。また、Mesa/Boogieの創始者ランドール・スミスがサンタナをして「Really Boogie!!」と言わしめた伝説の一件でもJBLが使用されたのはおなじみです。そして今日でも音響スピーカーと言えばまず真っ先にJBLの名が出るほどの第一級ブランドとして、(おそらくJames B. Lansing自身も予想しなかったであろうほどの)成功を収めています。

James B. Lansingが残した銘器D-130の楽器用10インチ仕様D-110F

James B. Lansingが残した銘器D-130の楽器用10インチ仕様D-110F

 JBLスピーカーの音についてはすでに世界中からあらゆる賛辞が上がっているため、今さら自分ごときが何を言うか、という感もあるのですが、あえて一言で言えば「音楽を聴くのにちょうど良い」という感想でしょうか。「良いスピーカーの音」ではなく、そんなことを忘れて「良い音楽」を聴いている気分がします。気づくと、鳴っている音楽に酔わされている、それがJBLの(特に古いモデルの)魅力なのでしょうか。

12インチのK120

Dシリーズの跡を受け継いだのは同じくアルニコマグネットを使用したKシリーズ。
写真は12インチのK120。

15インチのベース用E140

マグネットがアルニコからフェライトに変わったEシリーズ。
こちらは15インチのベース用E140。

 一方のAltec Lansingも音響スピーカーのトップブランドとして走り続け、70年代には楽器用スピーカーのエポックメイキングとも言える417-8HIIを開発。Mesa/Boogie MK-I及びMK-IIで主力として使用される他、ランディー・ローズが好んだスピーカーとしても知られています。その後もAltecは順調に音響スピーカー界のトップランナー的立場で走り続けて来ました。90年代後半にElectro Voiceの傘下に入り、今なおオーディオ界の第一線の位置を守り続けています。
Altecのエポック・メイキング417-8H IIを搭載した70年代のMesa/Boogie MK-I

Altecのエポック・メイキング417-8H IIを搭載した70年代のMesa/Boogie MK-I

 Altecを翼下に治めたElectro Voiceはこれまた奇しくもJensen、Lansing Manufacturing Co.と同じく1927年の設立、マイクの製造を起源とするメーカーで、James B. Lansingがこの世を去った1949年よりスピーカーを販売しています。ギターアンプではMesa/Boogie MK-IIIなどでもおなじみである他、ベース用スピーカーとしても絶大な人気があります。今日もJBLの良きライバルとして様々な会場の音響設備として接することも多いブランドです。
Electro Voiceが使用されていることを示す70年代のMK-Iのハードウッドエンクロージャー

Electro Voiceが使用されていることを示す70年代のMK-Iのハードウッドエンクロージャー

共鳴〜アメリカンスピーカーの歴史

 アメリカンスピーカーブランドの歴史を駆け足で見て来ましたが、こうして見てみると「奇しくも」という表現が何度となく出てしまうほどに、運命じみたものを感じずにはいられません。歴史の中に消えていった数々のブランド。そしてそれを受け継いで今この時も作り続けているブランド。そんな彼らの音への思いが、共鳴し合ってこの歴史を作っている、そんな印象を持ちました。


英国が誇る天空のスピーカー「Celestion」

 一方、海の向こうのイギリスではこれまた偉大な伝説が生まれています。そう、マーシャルでおなじみのCelestionスピーカーです。Celestion社が設立されたのは1924年。アメリカのJensenやLansing Manufacturing Co.そしてElectro Voiceなどよりも3年早く、現在も生産を続けている中では世界最古のスピーカーメーカーと言えます。Celestion社は創始者Cyril Frenchがロンドンの郊外、映画「ハリーポッター」の舞台にもなったサリー州キングストンのハンプトンウィッチに小さなスピーカー工場を作ったことから始まります。そして彼は当時スピーカー作りにおいて既に高い技術を持っていたEric Mackintoshというエンジニアの手を借りて新たなスピーカー制作を始めました。やがて、Cyril Frenchの3人の兄弟が工場に加わります。Celestion社の名前は「天高く」舞い上がるようなサウンドであるようにと「Celestial(天上の、天空の、神聖な)」という言葉から付けられたと伝えられています。Cyril Frenchの弟、Ralphによる命名でした。
 
 当時、Celestionではスピーカーの他に蓄音機の製造も行っていましたが、折しも英国国営放送(BBC)の放送がスタートしたのが1922年、そんなラジオブームに後押しされCelestion社のスピーカーのサウンドクオリティは電波に乗って英国全土へと広がって行きました。

 1920年代後半、アメリカのオハイオ州クリーブランドのスピーカーメーカーのRola社が、Celestion社の南西僅か数キロにあるトーマス・ディットンにイギリス工場を造りスピーカーの生産を始めます。そして第二次世界大戦により軍需ニーズの高まった1942年、米Rola社はスピーカーの製造部門を全てこのイギリス工場に移し、アメリカ本土での工場は航空機の照明など軍需産業に力を入れて行きます。スピーカー部門の集結により力を得たRolaイギリス工場(British Rola)は戦後の1947年、Celestion社を吸収します。翌48年、Celestion社はBritish Rolaのトーマス・ディットンへと移り、Rola Celestion社として新たなスタートを切りました。1949年、Rola Celestionはウェンブリーで音響機器やスピーカーを製造していたTruvox社を買収します。この合併により仲間に加わったエンジニアの中に、Les Wardという人物がいました。彼はその後、伝説となるG12スピーカーを開発し、Celestionの名を世界的に有名にすることになるのです。後に歴史を動かすことになるLes WardとCelestion社の出会い。ちょうど海の向こうではアメリカの天才、James B. Lansingがその生涯に自ら幕を閉じた年でもありました。

 1950年代後半、Rola Celestion社にとって大きな転機が訪れます。すでにRola Celestion社の中心的存在となっていたLes Wardは、旧知の仲であったJenning Musical IndustriesのDick Dennyより、ギターアンプ用のスピーカーの大がかりなの発注を受けます。Les Wardはかねてより開発していたG12に彼らのリクエストに基づいたアレンジを加え出荷し、1957年、このスピーカーが搭載されたギターアンプはVOX AC15として世界に登場しました。そして1960年代、ビートルズが世界を駆けめぐりVOXとCelestionの名を全世界へと焼き付けることになります。
VOXとCelestion

VOXとCelestion

 こうしたVOXアンプの成功でRola Clestion社のスピーカーはギターアンプメーカーからと大変な注目を集めることになります。真っ先にアプローチした一人がジム・マーシャルでした。VOX AC15が登場してから5年後の1962年、Celestion製スピーカーを搭載した初のマーシャルアンプが世界に羽ばたいて行くことになります。



THAMES DITTON SURREY ENGLANDの表記があるRola製G12

THAMES DITTON SURREY ENGLANDの表記があるRola製G12

 こうしてVOXとMarshallで大成功を収めたCelestionスピーカーはブリティッシュサウンドの象徴として今日に至るまで、世界中のメーカーに使用され、そして世界中のプレーヤーに愛されています。アメリカでも近年のMesa/BoogieやMatchlass、Bognerなどを始め多くトップブランドから好まれ、また日本製のモデルでもしばしば使用されています。

 G12の世界的ヒットに伴い、工場規模を拡大したRola Celestion社は1970年にロンドンの東北サフォーク州イプスウィッチにG12専用の巨大な工場を設立しました。そして75年に本社を含む全てがそこに集結され、今もイプスウィッチ工場ではCelestionスピーカーの生産が続いています。

1970年の移転前までのG12グリーンバック

通称”プリローラ”と呼ばれる1970年の移転前までのG12グリーンバック。
THAMES DITTON SURREYの表記がある。



近年のグリーンバック

こちらは近年のグリーンバック。IPSWICH, ENGLANDと表示されている。


スピーカーの判別法

 ほとんどのスピーカーには背面部にメーカー名などが記されたラベルが貼られています。しかしフェンダーのアンプなどは「Fender」と書かれたラベルが貼られていて、それがどこのメーカーのスピーカーは記されていません。また古くなってラベルが判読し辛い場合なども「ファクトリーコード」を確認すると、アメリカのスピーカーであれば、それがいつどこで作られたものであるのかを知ることができます。

Fenderのロゴが目立ちますが、Fender自体ではスピーカーは作っていません。

Fenderのロゴが目立ちますが、Fender自体ではスピーカーは作っていません。


Fenderのロゴが目立ちますが、Fender自体ではスピーカーは作っていません。

このスピーカーの縁に印字されているのがファクトリーコード

 ファクトリーコードは通常6ケタの数字で表記されます。
左から最初の3ケタが作られたメーカーを示す数字で(220はJensen)、次が作られた年の1の位(1957年なら7)、最後の2つはその年の何週目かを表します(49なら49週目→12月2日頃から9日頃までの間)。製造年にあたる4つめの数字は年の1の位しか表示していませんので、例えば7なら57年なのか67年なのか77年なのかは表記からだけでは判別できません。このためそのスピーカーの仕様や製造されていた期間などにから総合的に判断します。

主なスピーカーメーカーのファクトリーコード
67 EMINENCE
137 CTS
220 Jensen
232 Magnavox
285 Rola
328 Utah
336 Western Electric
391 Altec Lansing
465 Oxford
649 Electro Voice


スピーカーのファクトリーコード。

このスピーカーのファクトリーコードはここに。

近年のエミネンスは67-(8桁の数字)で表記され67-の後の最初の2桁が西暦を示します。
これは99年。

ツイードアンプにマウントされたこのスピーカーは?

ツイードアンプにマウントされたこのスピーカーは?

 

ここにファクトリーコード。1960年製Oxford

ここにファクトリーコード。1960年製Oxford



セレッションスピーカーの年代判別方

 セレッションの場合、イギリスのスピーカーですので表記は異なって2桁の数字と2桁のアルファベットで表示されます。2桁の数字は日付を示し、1桁目のアルファベットは製造月、2桁目のアルファベットは製造年を表します。

A=1月 B=2月 C=3月 D=4月 E=5月 F=6月
G=7月 H=8月 J=9月 K=10月 L=11月 M=12月
西暦 A=1968 B=1969 C=1970 D=1971 E=1972
F=1973 G=1974 H=1975 J=1976 K=1977
L=1978 M=1979 N=1980 P=1981 Q=1982
R=1983 S=1984 T=1985 U1986 V=1987
W=1988 X=1989 Y=1990 Z=1991


BL9 T1871

例:この場合B=2月、L=1978年、9=日付を示し、1978年2月9日の製造であることがわかります。
また下に表示されているT1871はTナンバーと呼ばれるモデルのヴァージョン番号で、ボイスコイルやコーン紙などのスペックが管理されています。頭の"T"はCelestionに買収されたTruvoxにちなんで、設計者Les Wardがつけたものだと言われています。


スピーカー交換にチャレンジ/許容入力とインピーダンス

 スピーカーの交換に特殊な技術や道具はいりません。配線の形状にもよりますが、ハンダ付けを必要としないで交換できるものも多く、基本的にはドライバーとレンチ(ペンチでも可)があれば大丈夫です。
(コンボアンプなどでモデルによってはアンプ部まで分解しないとスピーカーを取り外せないものもあります。そのようなモデルに関しては、専門店に依頼されることをお勧め致します。)
このナットを外せばスピーカーは取り外せます。

このナットを外せばスピーカーは取り外せます。



簡単に脱着

このタイプのコネクターの場合、ハンダ付けなしで簡単に脱着できます。
プラスマイナスを間違えないように注意!



許容入力とインピーダンス

 スピーカーを交換するにあたり、まず第一に「何に変えるか」を決めるのが先決。各ブランドの歴史的流れについては、ここでご理解頂けたかと思います。また個々のモデルのサウンドイメージについては当店HPの商品ページにもご紹介させて頂いておりますので、ご参考にして頂ければ幸いです。
 
 また交換用スピーカーを決定する際に必要なのが許容入力とインピーダンスです。許容入力とはスピーカーが受け入れられる最大出力(W)のことで、それを超えて使用することはスピーカーを破損させる要因になりますし、アンプ自体にもダメージを与えかねません。アンプの出力ワット以上の許容入力のものを選ぶのが基本となります。スピーカーを複数本使用する場合は各スピーカーの許容入力の合計が全体の許容入力になります。

 例:許容入力30Wのスピーカー1本では50Wのアンプに使用できませんが、2本であれば計60Wの許容入力となるので50Wのアンプで使用できます。

 次にインピーダンスについてです。スピーカーとはアンプの出力トランスから流れる電流を受けて作動するものですが、その受ける電流量に対して効率よく動作するための抵抗値がインピーダンスです。これも許容入力と同じくして、アンプの出力インピーダンス(電流量)より小さなインピーダンスでは使用できません。これも破損などダメージの原因となります。また特にチューブアンプの場合、アンプの出力インピーダンスより大きくても効率良く鳴らすことができませんので、レスポンスが低下したり、音が遠く聞こえたりすることがあります。アンプの出力インピーダンスに適したインピーダンスを選ぶと良いでしょう。例えばアンプの出力インピーダンスが8Ωなら8Ωのものを使用しましょう。またアンプ側の出力インピーダンスが8Ω/16Ωなど切り替えできるものに関しては、最大のインピーダンス(この場合16Ω)で使用した方が、出力される電流量は大きくなり、アンプのパワーを最も効率良い形で出力することができます。(マーシャルなどで、小さな会場で大きな音が出せない場合、あえて4Ω/4Ωで使用し、アッティネーター代わりにするという裏技的な使い方もありますが。)トランジスタアンプの場合はミニマム何Ωという表記がされている場合が多いので、それ以上のインピーダンスであれば使用できます。

 また複数のスピーカーを使用する場合は、直列に繋いだ場合は各インピーダンスの合計値が、並列に繋いだ場合は各インピーダンスをスピーカーの本数で割ったものが総合のインピーダンスとなります。
※異なったインピーダンスのスピーカーを同時に使用することはトラブルの原因となる上、サウンド的なバランスも悪くなりますのでおやめください。

直列・並列

図上(直列):8Ω+8Ω=16Ω
図下(並列):8Ω÷2(スピーカーの数)=4Ω

(並列時のインピーダンスはオームの法則:1/A+1/B=1/nでも計算できます。)

スピーカーの修理について

 スピーカーに関しては特殊技術なしに修理できる部分はほとんどなく、とばしてしまったり、コーン紙を破いてしまった場合は基本的にスピーカーごと交換することになります。特殊技術をお持ちの方は別として、コーン紙の張り替えなどスピーカーの修理を専門の技術者の方に頼む場合、その費用は新品のスピーカーを購入するより高額になることがほとんどですので、通常は直すより交換する方が手軽でローコストで行えます。ただしヴィンテージなど交換できる同等品がなく、そのスピーカーの音でなければだめな場合は、コーン紙の張り替えやボイスコイルの修復などの修理は可能です。


誰でもできるメンテナンス

 このようにスピーカーにおいてはメンテナンスできる部分はほとんどないのですが、メンテナンスというほどではないものの、簡単にできるチェックポイントをお伝えしましょう。ギターアンプ用のスピーカーは12インチであれば通常1本で3キロ以上の重量を持ち、中には10キロ近いものもあります。これが大音量で激しく振動するわけですから、当然その振動によってスピーカーを固定しているネジ類は緩んできます。するとスピーカーの振動がダイレクトにキャビネットに反映されないことになり、緩み加減にもよりますがサウンドはルーズになります。例えば5〜6年使ったマーシャルキャビネットを開けてみると中のスピーカーはほとんど緩んでいます。これをしっかりと締め直すだけで、サウンドは俄然タイトになりますので、「最近サウンドにエッジ感がなくなってきた」などと感じている方はチェックされて見るとよいでしょう。状況にもよりますが、驚くほどに変わる場合もありますので、大音量で頻繁に使用されている方は緩みがないか定期的にチェックしてみると良いでしょう。
(たまに練習スタジオなどの古いアンプで「あ〜スピーカーのネジ締めたい!」と衝動にかられる音のものに出会うことがあります(笑)。まさかスタジオで勝手にキャビネットを開けて作業する訳にもいきませんので我慢しますが…。)

直列・並列

このネジを締めるだけでサウンドはタイトに。


スピーカーとは何か

 コイルに電流を与えることで振動板を振動させ、空気振動により音声を伝達する装置。これがスピーカーの定義です。つまり我々はスピーカーが送り届ける空気の振動を聴いていることになります。音とは空気。普段はそんなことは思わないのですが、そんなことを感じさせてくれるエピソードがありましたので最後にご紹介したいと思います。

 何年か前、アメリカへ行った時にバスの中で天井から聴こえてくる音楽に戦慄を覚えました。それはエリック・クラプトンの有名な曲で、自分としては熱心なファンではないのですが、それでも自宅のCDやラジオや立ち寄った店のBGMなどで何度も聴いていて、失礼ながら言わば聴き飽きた曲だったわけです。それがなんでこんなにぞっとするほど美しいギターの音なんだろうと。見てみると安普請のバスの天井に埋め込まれたちっぽけなスピーカーから、しかもモノラルで鳴っている。音響的には決して恵まれた環境ではないはずですが、今まで聴いたことのない周波数が聴こえ、音に色があるとするならそれは、鮮やかに異なった色で見えました。その時初めて「日本の空気で聴くのとは違う」ということを実感しました。

 それ以来、少し気をつけているとお天気の日にはお天気の、雨の日には雨の音があるんだなと、今更ながら気付くことができました。そんな感覚で聴いてみると60年代のレコードには60年代の空気の音が入っていて、70年代のレコードにはまた当時の空気の音が入っているんだなと思います。(最近のライン録りのはどうなんでしょうか。)これだけスピーカーのお話をした上で、最後に空気だなんて言っては元も子もないのですが(今までのは何だったんだ…)我々は様々なスピーカーを通じて空気の音を聴いているんだな、と改めて思うことができ、そんなエピソードで今回は締め括らせて頂きたいと思います。
空気を大切にしたいですね。




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